2026-09-01|lullaby株式会社 代表取締役 坂口 大晟

架電接続率10%台時代のアウトバウンド戦略
——マルチチャネルの設計方法

架電接続率は10%台まで低下しました。「リストに電話をかけまくる」という単一チャネルのモデルは、もう成立しません。多くの組織が次の一手として「メールも」「LinkedInも」とチャネルを増やしますが、それだけでは接続率の低下を補えないケースがほとんどです。理由は単純で、チャネルを増やす前に、その企業にそのチャネルが実際に届くのかを確認していないからです。この記事では、当社保有の国内企業データベースの実測値と海外のSDRベンチマーク調査をもとに、マルチチャネルを「思いつき」ではなく「設計」として組み立てる手順を解説します。

架電接続率10%台がもたらした、単一チャネルの限界

架電接続率の低下は一時的な現象ではなく、構造的な変化です。同じ架電数をこなしても得られる商談数は減り続け、より多くのリストとより精度の高い事前調査が必要になります。数千件の通話分析から見えるコールドコールの改善余地はありますが、それは「つながった後」の話であり、つながる前の接続率そのものを底上げする話ではありません。だからこそ、電話一本足の設計から、複数チャネルを組み合わせた設計へ切り替える必要があります。ただし、チャネルを増やすことと、チャネルを「設計」することは別物です。

そもそも、その企業に電話は「かけられる」のか

マルチチャネルを検討する前に確認すべきは、各チャネルの連絡先情報がどれだけ揃っているかです。当社保有の国内企業データベース(755,119社・2026年5月時点)で連絡手段の取得可能社数を集計すると、次のようになります。

連絡手段取得できる社数全体に占める割合
代表電話番号402,888社53.4%
代表者氏名518,608社68.7%
代表メールアドレス161,657社21.4%
問い合わせフォーム112,773社14.9%

代表電話が取れる企業は全体の半分強にとどまり、代表メールに至っては2割強しかありません。「メールも併用しよう」という判断自体、母集団の8割近くでは実行できないのです。さらに、代表電話が取れない企業の中にも、部署の直通電話という抜け道があります。営業部への直通TELが取得できる企業は95,063社あり、そのうち代表電話は取れないのに営業部の直通は取れる企業が30,956社存在します。つまりマルチチャネル設計の第一歩は、「電話・メール・フォームのうちどれを使うか」ではなく、「その企業について、そもそも何が使えるデータとして存在するか」を先に確認することです。届かないチャネルを設計に組み込んでも、机上の空論で終わります。

複数チャネルを「併用」するだけでは足りない——タッチ数設計の話

チャネルが揃っても、1回ずつ触れて終わりでは接続率は上がりません。海外のアウトバウンド専門機関Predictable Revenueの調査によれば、見込み客との接触には平均9〜12回のタッチが必要とされる一方、多くの営業担当者は2〜3回試みた時点で諦めてしまうといいます。さらに同調査では、リードへの最初の連絡が数時間以内に行われた場合、接触率が3倍になることも報告されています。

この2つの事実は、マルチチャネル設計に直接効いてきます。チャネルを増やす目的は「間口を広げる」ことだけでなく、同じ相手に対して自然な間隔でタッチ数を積み増すことにあります。たとえばメールで最初に触れ、数日後に電話、反応がなければLinkedInで補強する——というように、チャネルを跨いで9〜12回分のタッチを設計して初めて、単一チャネルの接続率低下を補えます。1チャネルにつき1〜2回打って終わる運用では、チャネルを増やした意味がありません。

メールは「送信数」では決まらない——量と質の分離

マルチチャネルの中でメールを組み込む場合、量を追うだけでは成果が伸びない点にも注意が必要です。Gong Labsが2,800万件を超えるコールドメールを分析した調査では、平均して344通の送信につき1件の会議獲得にとどまる一方、上位の営業担当者は平均的な担当者の8.1倍の会議を予約し、返信率も4.2倍という結果が出ています。コールドメールの返信率ベンチマークを見ても、ターゲティングの精度によって成果が数倍単位で変わることが分かっています。

つまりメールは「チャネルの一つとして追加する」だけでは弱く、質を担保できる送信先に絞り込んで初めてタッチ数の一角として機能します。到達可能性で絞り込んだ21.4%の企業に対しても、送る相手と訴求内容が合っていなければ、344通に1件という平均値からさらに下振れします。マルチチャネル設計における各チャネルの配分は、「使えるかどうか」に加えて「質を保てる範囲かどうか」でも調整する必要があります。

マルチチャネルを設計する3つの手順

  1. Step 1: 到達可能性を企業ごとに監査する — 電話・メール・フォーム・部署直通のうち、対象企業にどれが存在するかを先に洗い出す。存在しないチャネルは設計に含めない。
  2. Step 2: 9〜12タッチを前提にチャネルの順序と間隔を決める — 1チャネル1回で終わらせず、複数チャネルを跨いで自然な間隔のタッチ数を積み上げる。初動は数時間以内を目安にする。
  3. Step 3: チャネル別の結果を記録し、配分を見直し続ける — 「誰に・どのチャネルで・何を送り、どうなったか」という仮説と結果をセットで記録する。この因果データが蓄積されるほど、次に注力すべきチャネルの精度が上がっていきます。

この3ステップは、言葉にすると単純に見えて、人手で回すと負荷が大きい作業でもあります。企業ごとの到達可能性を都度調べ、チャネルを跨いだタッチのタイミングを管理し、結果を記録して配分を見直す——これを架電と並行して継続するのは、通常のインサイドセールス業務に上乗せするには工数が重すぎます。だからこそ、到達可能性の判定・タッチの実行・結果の記録を自動化し、人は「どのチャネルに重心を置くか」という判断だけに集中できる状態を作ることが、マルチチャネル設計を継続的に回すための現実的な落としどころになります。

マルチチャネルは、電話が使えなくなった穴をメールやLinkedInで埋める「代替策」ではありません。企業ごとに存在するデータを起点に、タッチ数と質を設計し、結果を記録して精度を上げ続ける——このループを回せるかどうかが、架電接続率10%台の時代に商談を獲得し続けられるかの分かれ目になります。

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この記事は「インサイドセールス実践ガイド——商談獲得のKPI設計・接続率対策・体制づくり」の一部です。全体像はそちらからどうぞ。

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