インサイドセールスの業務の70%はノンコア業務
——内訳と自動化の優先順位
「架電しているはずなのに、なぜか架電数が伸びない」——多くのインサイドセールス組織が抱えるこの違和感の正体は、業務時間の使い方にあります。インサイドセールスの業務時間のうち、顧客との対話に使えているのはごく一部で、約70%はリスト作成・事前調査・文面作成・CRM入力といったノンコア業務が占めています。この記事では、ノンコア業務の内訳と、何から自動化すべきかの優先順位を解説します。
ノンコア業務が70%を占めるという実態
インサイドセールスの本来の仕事は、顧客と対話し、ニーズを引き出し、商談につなげることです。しかし実際の1日を分解すると、対話そのものに使える時間はごく一部で、大半は対話の「準備」と「後処理」に費やされています。
具体的には、次のような業務がノンコア業務にあたります。
- リスト作成 — ターゲット企業・担当者の検索、リストへの転記
- 事前調査 — 架電前に企業の情報を調べ、対話の切り口(仮説)を用意する
- 文面作成 — メールやLinkedInメッセージの下書き作成
- 社内報告 — 日報・週報、進捗の共有
- CRM入力 — 架電結果・商談内容の記録
これらはどれも「顧客に価値を届ける」行為ではなく、対話を成立させるための付随作業です。人力でこなす限り、対話の量を増やそうとすればするほどノンコア業務の量も比例して増えるという構造になっています。
なぜ今、この構造が限界を迎えているのか
1. 架電モデルの崩壊
架電接続率は10%台まで低下しています。「リストに電話をかけまくる」という単一モデルでは、同じ架電数をこなしても得られる商談数は減り続けます。接続率が落ちるほど、より多くのリストと、より精度の高い事前調査が必要になり、ノンコア業務の負荷はさらに増します。
2. インバウンドの鈍化
市場の成熟と競合の増加により、問い合わせを待つだけでは目標を達成しづらくなっています。BDR(アウトバウンド)・エンタープライズシフト・既存顧客アップセル・LinkedInなどのマルチチャネル活用など、限られたリソースで多様な戦略を同時に回す必要が出てきました。
3. トップセールスをクローンできないジレンマ
多様な戦略を回すにはトップ水準の営業力が必要ですが、その判断軸は本人の頭の中にしかなく、他のメンバーへの展開には時間がかかります。結果として、現場は既存のノンコア業務に追われたまま、新しい戦略に手を広げる余裕がないという悪循環に陥ります。
自動化の優先順位のつけ方
ノンコア業務をすべて一度に自動化しようとすると、設計だけで数ヶ月かかり、現場は変わらず疲弊したままになります。優先順位をつけて、対話に使える時間を段階的に取り戻すことが重要です。
- Step 1: 業務を「対話」と「ノンコア」に切り分けて可視化する — 1日の業務を棚卸しし、顧客と直接向き合っている時間とそれ以外の時間を分ける。何にどれだけ使っているかが見えないと、優先順位はつけられません。
- Step 2: 頻度・所要時間・属人性でノンコア業務に順位をつける — 毎日発生し、所要時間が長く、かつ誰がやっても同じ結果になる(属人性が低い)業務ほど自動化の効果が大きく、着手しやすい対象です。CRM入力や文面の下書きはこの条件に当てはまりやすい一方、事前調査の「どの情報を武器にするか」の判断は属人性が残るため、AIが下書きを作り人が最終確認する形が現実的です。
- Step 3: 定型業務から自動化し、仮説と結果を記録する仕組みを作る — 「誰に・いつ・何を・なぜアプローチしたか」という仮説と、その結果(返信・商談化など)をセットで記録できるようにする。記録がなければ、何を自動化すべきかの精度も上がっていきません。
- Step 4: 空いた時間を対話に再配分し、KPIで効果を測る — 自動化で浮いた時間は、必ず顧客との対話に再配分する。効果測定は「有効アプローチ数」「接触率」「商談獲得率」の3つのKPIで追うと、どの自動化が効いているかが分かります。
このステップを回す際、事前調査だけで1件あたり30〜45分かかっていたリサーチや、1通あたり10分かかっていたメール文面作成のように、時間のかかる定型業務から着手するほど、対話に回せる時間の増分は大きくなります。
ノンコア業務を減らした先にあるもの
ノンコア業務の自動化は、単に「作業を減らす」ための取り組みではありません。空いた時間を顧客との対話や、戦略の意思決定という人にしかできない仕事に再配分することが本質です。そして、記録された仮説と結果の因果データが蓄積されるほど、次のリスト作成やアプローチの精度も上がっていきます。ノンコア業務の削減と、営業精度の向上は、切り離せない一つの取り組みです。