SDRのKPI、世界標準はどこか
——351社調査(The Bridge Group 2025)を読む
「うちのインサイドセールスのノルマは妥当なのか」。この問いに答えるための、世界で最も参照されている調査があります。米The Bridge Groupが2007年から隔年で続けているSDR調査で、最新の第10回(2025年・351社のB2B企業が参加)が公開されています。
主要な数字を紹介し、後半で「日本のインサイドセールスにどう当てはめるか」を整理します。
活動量:1日112アクティビティが中央値
| 指標 | ベンチマーク(中央値) |
|---|---|
| 1日の総活動量 | 112件(電話44・メール41・LinkedIn 19・その他8) |
| 質の高い会話(QC) | 4.1件/日——調査史上初めて反発上昇 |
| 電話中心チーム | 56コール/日・QC 4.6件 |
| メール中心チーム | 28コール/日・QC 3.4件 |
注目すべきは活動の内訳です。電話はもはや活動量の4割弱で、メール・LinkedInを含むマルチチャネルが標準になっています。また「質の高い会話」を活動量と別に数えている点は、日本のKPI設計にそのまま輸入する価値があります。架電数だけを数えると、つながらない時間帯に電話を積む行動が最適化されてしまうからです。
成果:ノルマは月10商談、達成できるのは60%
| 指標 | ベンチマーク |
|---|---|
| 月間ノルマ(獲得した初回商談) | 10件(グローバル中央値) |
| うち有効化(次工程へ進んだ商談) | 6件 |
| ノルマ達成者の割合 | 60%——調査史上最低 |
| SDR1人が年間に作るパイプライン | 378万ドル(2022年の283万ドルから増加) |
「ノルマの月10件」と「有効化の6件」が分かれている点が重要です。商談の数と質を別のKPIで持つ設計は、アポ数偏重を防ぐ実務の知恵です(インサイドセールス実践ガイドで解説している「質で締める」と同じ考え方です)。達成率60%が史上最低を更新したことは、先進市場でも商談獲得が年々難しくなっている証拠でもあります。
組織:立ち上がり3.0ヶ月・在籍1.9年・SDR 1人にAE 2.4人
| 指標 | ベンチマーク |
|---|---|
| ランプ(一人前になるまで) | 3.0ヶ月——2010年以来の短さ |
| 平均在籍期間 | 1.9年——2010年代前半以来の長さ |
| 年間離職率(中央値) | 40% |
| SDR:AE比率 | 1 : 2.4(2018年から一貫) |
| マネジャー1人あたりのSDR数 | 6.4人 |
ランプが短くなり在籍が伸びたのは朗報ですが、それでも年間離職率40%。SDRという職種は、構造的に「ノウハウが人に溜まり、人と一緒に出ていく」仕事です。トークや判断基準を個人の頭ではなく組織の仕組みに残す設計(コンパウンドセールスの発想)が、この離職率の前提では合理的になります。
日本に当てはめるときの3つの注意
- 電話の比重は日本のほうが重い。米国は個人メールアドレスとLinkedInが使える前提の112件です。日本では代表メールが取れる企業が2割程度しかなく(当社75万社データベースの実測で21.4%)、メールの母集団はそもそも限られます。電話比率が高くなるぶん、1日の総活動量は112件より少なくなるのが自然です
- 「質の高い会話」を数える。架電数ではなく、担当者と課題の話ができた会話の数をKPIに置く。この1点だけでも輸入する価値があります
- ノルマは市場とリストで決まる。月10件はあくまで中央値です。母集団の大きさ・接続率・商談化率から逆算して自社の数字を作るのが正攻法で、リストの母集団を先に測ることが起点になります
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この記事は「インサイドセールス実践ガイド——商談獲得のKPI設計・接続率対策・体制づくり」の一部です。全体像はそちらからどうぞ。
出典:SDRのベンチマークは The Bridge Group "2025 SDR Models & Metrics"(第10回・351社・2025年)による。米国中心のB2B企業の調査であり、日本市場でそのまま同じ値になるとは限りません。国内の連絡先充足率は当社保有の国内企業データベース(755,119社・2026年5月時点)の実測値です。