国内AI営業ツールの勢力図
——Sales Marker・SalesNow・immedioは何が違うのか
商談獲得を目的に国内の「営業AIエージェント」を検討すると、Sales Marker・SalesNow・immedioという名前が繰り返し出てきます。3社とも数億円規模の資金調達を経て成長しており、同じ「AI営業ツール」というカテゴリに括られがちですが、実際にはアプローチの起点がまったく違います。この記事では、国内AI営業・SDR関連プレイヤーの一次情報をもとに、3社が何を狙っているのか、そして国内でまだ手薄な領域はどこかを整理します。
国内AI営業ツールの勢力図——起点で分かれる7社
国内のAI営業・SDR関連プレイヤーを、海外カテゴリの対応ポジションと合わせて並べると次のようになります。
| 国内プレイヤー | 領域 | 海外の対応ポジション | 起点 |
|---|---|---|---|
| Sales Marker | インテントセールス | Unify(シグナル起点) | ウォーム |
| immedio | インバウンド商談化 | Qualified/Piper | インバウンド |
| SalesNow | 企業データベース+AIエージェント | Clay(データ層) | 基盤 |
| RevComm(MiiTel) | 音声解析・会話データ | Gong/Chorus | (分析層) |
| ナレッジワーク | セールスイネーブルメント | Highspot/Seismic | (支援層) |
| Magic Moment | セールスエンゲージメント | Outreach/Salesloft | (実行層) |
| AI架電系サービス(AIアポろうくん等) | AI架電・アポ獲得 | 11x/Artisan(部分的) | コールド |
この中で「商談獲得のどの起点を狙うか」がはっきり分かれ、かつ大型調達を集めているのがSales Marker・SalesNow・immedioの3社です。以下ではこの3社を中心に、何が違うのかを見ていきます。
Sales Marker・SalesNow・immedioの違い
3社とも「AI」を掲げていますが、調達規模も特徴もそれぞれ異なります。
| 企業 | 調達規模 | 特徴 |
|---|---|---|
| Sales Marker | シリーズA 8.4億円(2023年12月)→エクステンション含め累計23.5億円(2024年7月)。サービス開始約2年でARR20億円※ | 520万件超の法人データベースとインテントデータを組み合わせ、「今まさに求めている企業」を特定。導入企業で商談数3倍・商談効率8倍の事例あり※。2024年12月に業界特化型を投入 |
| immedio | シード1.5億円(2022年9月・DNX Ventures、デライト、Sansan等)→シリーズA 3.5億円(2024年7月・DNX主導)。累計5億円 | Webサイトの問い合わせ・資料請求から商談設定までを自動化。「インバウンド商談の最大化」を掲げる |
| SalesNow | シリーズAエクステンション(2024年11月)で累計6.5億円(銀行借入含む) | 国内法人1,400万件を網羅する業界最大級の企業データベース。「SaaS+Database」モデル。商談数2.3倍・工数削減8.6時間/人などの実績を掲げる※。パーソル、JCB等が導入※ |
※印の数値は各社発表・事例ベースであり、第三者による確認は取れていません。とくにSalesNowの調達額は銀行借入を含む合算値で、内訳が非公開のため参考値として扱うべきです。
起点の違いが「刺さる相手」を分ける
3社が正面衝突せず共存できているのは、狙っている相手の状態がそもそも違うためです。
- Sales Marker(ウォーム)——転職・資金調達・技術導入といった行動シグナルが出ている企業を、インテントデータで見つけて先回りする。海外のUnifyに近いポジション
- immedio(インバウンド)——すでに自社サイトへ来ている・資料請求をした企業を取りこぼさず商談化する。相手が能動的に動いた後の刈り取りが主戦場
- SalesNow(基盤)——1,400万件のデータベースを土台に、リスト作成そのものをAIエージェント化する。海外のClayと同じ「データ・オーケストレーション層」に近い
つまり「今すぐ客に強い」のがimmedio、「動きはあるが接点はまだない企業」に強いのがSales Marker、「母集団づくりそのもの」を担うのがSalesNowという整理になります。自社の商談獲得がどの工程で詰まっているのかを先に言語化しないと、3社の比較は「機能一覧の見比べ」で終わってしまいます。
国内で手薄な領域——コールドアウトバウンドの自律実行
調査シートが指摘している通り、国内はSales Marker(ウォーム)とimmedio(インバウンド)に大型調達が集中しています。一方、海外の11x・Artisanのように「接点ゼロの新規開拓(コールド)をAIが自律実行する」領域は、大型調達を受けた国内プレイヤーが見当たらず、リストをアップロードするとAIが自動架電するタイプの小規模サービスが複数存在するにとどまります。
興味深いのは、国内で最大の資金調達規模を持つのは3社のいずれでもなく、音声解析AIのRevComm(MiiTel)だという点です(2026年7月にシリーズB 33.5億円、累計86億円を調達)。会話データという「分析層」に投資が集まる一方、コールドの実行そのものを担う層は薄いままというのが、国内AI営業ツール市場の現在地です。海外AI SDR 5社の資金調達マップで見た11x・Artisanのポジションが、国内ではまだ空白に近いということでもあります。
海外との規模比較と、選定の判断基準
| 項目 | 国内最大級 | 海外最大級 | 倍率の目安 |
|---|---|---|---|
| 調達規模 | RevComm 累計86億円(約$58M)※ | Clay 累計$204M(約300億円) | 約3.5倍 |
| 評価額 | 非公表 | Clay $3.1B〜$5B※ | — |
| ARR | Sales Marker 20億円(2024年7月時点)※ | Clay $100M見込(約150億円)※ | 約7.5倍 |
為替は1ドル150円で概算。国内は市場規模自体が海外と異なるため単純比較はできませんが、AI SDRの比較検討で持ち帰れる判断基準は3つです。
- 自社の商談化のボトルネックを先に特定する——インバウンドで取りこぼしているのか、動きはあるが接点がない企業を逃しているのか、そもそも母集団づくりに工数を溶かしているのか。ここが定まらないまま3社を比較しても、機能過多な検討になります。
- コールドの自律実行を求めるなら、国内単体では選択肢が薄いと理解する——現状は小規模なAI架電サービスか、インサイドセールス代行との組み合わせが現実的な選択肢になります。
- 調達規模はプロダクトの成熟度の目安にはなるが、ARR算出時期が各社バラバラな点に注意する——「サービス開始2年でARR20億円」のような数値は、算出時点・算出方法が発表元によって異なるため、単年の成長率として鵜呑みにしないほうがよい。
国内AI営業ツール市場は、ウォームとインバウンドの2つの起点に投資が集中し、コールドの自律実行という一番労力のかかる領域は手つかずのまま残っています。ツールを比較する前に、自社がどの起点で詰まっているかを言語化することが、遠回りに見えて一番早い選び方です。
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この記事は「営業AI・AI SDR活用ガイド——種類・選び方・失敗しない導入手順」の一部です。全体像はそちらからどうぞ。
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- COMPASS AI(商談獲得AIエージェント) — ターゲット定義からリスト作成・マルチチャネルのアプローチまでAIが自律実行する
- インサイドセールス代行 — アポ数ではなく受注につながる有効商談にコミットするIS代行。スクリプト・断り理由まで開示
- 営業リストの条件指定 — エリア・規模・業種・採用状況・部署直通の有無など、75万社から条件を指定して見積りを受け取れる
出典:国内プレイヤーの調達・実績データはGoogleスプレッドシート「AI SDR 海外プレイヤー調査【コア版】」08_国内プレイヤータブ(各社公式リリース・国内メディア報道をもとに作成、調査時点2026年8月・lullaby株式会社作成)による。※印の付いた数値は各社発表・事例ベースで、第三者による確認は取れていない。同シートの注記の通り、国内情報は海外5社ほどの深さでは調査できておらず、SalesNowの調達額など未確認の項目が含まれる。