2026-09-07|lullaby株式会社 代表取締役 坂口 大晟

営業リスト作成を自動化する方法
——固定タグ検索の限界とAIによる文脈理解

「業種」「従業員数」「地域」で絞り込む営業リストの作り方は、いまも大半のツールの標準的な使い方です。しかし本当に商談化する企業は、その固定タグの枠に収まりきらないところに散らばっています。この記事では、固定タグ検索がなぜターゲットの半分近くを取りこぼすのかを当社DB約75万社の実測で示し、AIの文脈理解でリスト作成を自動化する方法と、明日から使える判断基準を解説します。

固定タグ検索とは何か——なぜ「絞るほど正確」にならないのか

固定タグ検索とは、業種コード・従業員数レンジ・地域といった、あらかじめ用意された分類軸を掛け合わせて対象企業を抽出する方式です。ZoomInfoやLinkedIn Sales Navigatorのような汎用データベースツールの標準的な使い方であり、多くの営業リストの作り方がこの発想を前提にしています。

問題は、タグの粒度が実務の判断より粗いことです。Clayのブログは汎用ツールの限界をこう指摘しています。「大規模であるがゆえに、求めている条件に詳細に焦点を当てるのには向いていない」。たとえば「会計サービスを提供する企業か、会計ソフトを開発する企業か」のような、営業現場では当たり前に必要な区別に対応するタグは、最初から用意されていません。絞り込むほど、本来入るべき企業が条件の外側にこぼれ落ちていく構造です。

何が起きるか——タグでは拾えない需要が母集団の半分近くを占める

この構造がどれほどの取りこぼしを生むかは、当社が保有する国内企業データベース(約75万社・2026年5月時点)の実測から確認できます。営業職を募集している企業は約4万社ありますが、その業種内訳を見ると、最大の「その他サービス」でも約10%にとどまり、単一業種で母集団の大部分を占めることはありません。上位5業種(その他サービス・ソフトウェア/SI・機械器具・建設関連・不動産売買)はいずれも僅差で並び、突出して大きい業種はないのが実態です。

上位15業種を全部合計しても約60%です。残り約40%・約2万社は、上位15業種のどれにも属さない個別業種に分散しています。「IT・ソフトウェア業界の営業職募集企業」のように業種タグを1つ選んで検索すれば、この時点で母集団の9割以上を検索対象から外すことになります。タグを増やして精度を上げようとしても、業種の掛け合わせは組み合わせ爆発を起こし、運用しきれません。固定タグ検索が「絞るほど正確」ではなく「絞るほど取りこぼす」方式である理由がここにあります。

AIによる文脈理解が変えること——タグの外側を読む

この限界を越える方法は、分類をあらかじめ用意されたタグに頼らず、AIが企業の公開情報(採用ページ・ニュース・利用ツールなど)を都度読んで、自然言語で与えた条件に沿って判定する方式です。Clayはこれを実際のワークフローで示しています。ある企業が「会計サービス提供企業か、会計ソフト企業か」をAI(Claygent)に自社サイトを読ませて判定させ、従来の業種タグでは不可能だった精緻な選別を実現しました。別の事例では、求人ページの職種構成から「プロダクト主導型かセールス主導型か」というGTMモデルを80%以上の確度で分類しています。これはどちらも、業種コードという固定タグでは表現できない条件です。

効果は速度とコストにも表れています。Clayが公開した実測では、従来は5万行の上限を回避するため約350のテーブルに分割してフィルタリングしていた処理が、条件を自然言語で1回投げるだけで数分に短縮され、処理コストは98%削減、取得件数の上限も従来の5万行から大幅に拡大したと報告されています。タグの掛け合わせで絞り込む作業そのものが、AIに条件を渡す一手間に置き換わったということです。

COMPASS AIICPの作り方の思想もここに重なります。「1人当たりの採用予算100万円で、年間10人以上採用している企業の人事部中途採用担当者」のように、業種や規模では言い切れないニッチな条件を自然言語で渡し、AIが公開情報から推論ロジックを組み立てて企業を抽出する——固定タグに縛られず、人が指示した文脈をAIが読み解いてリストを自動生成する発想です。

明日から使う判断基準——固定タグからAIの文脈検索へ

大がかりな乗り換えは必要ありません。今の運用に判断基準を1つずつ足すところから始められます。

  1. Step 1: 今のタグ条件で外れている企業の割合を概算する——「業種」「従業員数」だけで絞っている場合、本記事の営業職募集企業の例のように、上位数業種の合計が母集団の何割かを一度計算してみる。半分を割り込むなら、タグの粒度が実務に合っていないサインです。
  2. Step 2: ICPを「業種」ではなく「行動条件」で言語化する——採用状況・資金調達・利用ツールなど、企業が実際に取っている行動を条件にすると、業種タグより解像度が上がります。
  3. Step 3: タグ検索で出したリストを土台に、AIへ自然文で除外・優先順位条件を追加する——ゼロから作り直す必要はなく、既存リストの精度をAIで底上げする使い方が着手しやすい。
  4. Step 4: リストの精度だけでなく「架けられるか」も検証する——リストが完成しても、代表電話が取れる企業は当社DBで約50%にとどまります。部署直通の電話番号まで含めて到達可能性を確認する工程を、リスト作成の最後に必ず入れます。

固定タグ検索は「今あるツールでできる範囲」を教えてくれますが、「本当に狙うべき企業がどこにいるか」までは教えてくれません。AIに文脈を読ませる工程を1つ足すだけで、この間にある取りこぼしを埋められます。

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この記事は「営業リスト完全ガイド——作り方・買い方・質の見極めを75万社の実データで解説」の一部です。全体像はそちらからどうぞ。

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出典:業種・到達可能性の数値は当社保有の国内企業データベース(約75万社・2026年5月時点)の実測による。調査会社の統計ではないため、日本企業全体の割合として一般化はできない。AIによる文脈理解の事例と効果指標は Clay「How to Build the Most Targeted Account Lists Possible」およびClay「Continuously find every account in your TAM, at scale」による。